2007.06.19 Tuesday
その先にあるもの〜進歩主義者になってみた
前回の一時的なバブルなのか新秩序への移行なのかを受けて、じゃあ次に何がくるのか、というのを書いてみたくて少しブレインストーミングしてたんですが、レベルソ好きさんに次代の潮流その2と国産時計への勝手な思い立て続けにツボにくることを書かれてしまったので、私としては頭の整理ができて大変ありがたく思う一方で、あれ以上に書けることなどあるのだろうか、と思いもするのでした。
でもちょっと書いてみます。
でもちょっと書いてみます。
私は還元主義で物事を単純化しないと考えられない人なので、私の理解した範囲でまず状況を整理します。
■90年代中頃の機械式時計の復活の中で、特にデジタルやクォーツや当時の新素材との差別化から機械式の歴史、アナログさ、手作り感を打ち出すマーケティングが行われた
■実際には数を捌くためにかなりcomputerizeされた設計・生産プロセスに移行していた
■手作りであることの郷愁、という価値においてはAHCI(なかんずく、フィリップ・デュフォーなど)に明らかに劣後している
■コアなファン層が成熟してきて、上記のような状況を見抜きつつあった
■単に「機械式である」「複雑時計である」というだけでは差別化する価値を生み出さなくなりつつあった
というのがおそらく2001〜2002年くらいまでの状況だと考えています。これを受けて各社投資を始めて、その結果が2004〜2005年くらいから顕著に出てきていると思われますが、そこで特徴的なのが
■テクノロジーであることを謳いはじめているI(新素材)
■テクノロジーであることを謳いはじめているII(脱進機)
■テクノロジーであることを謳いはじめているIII(精度の高い加工)
■ハリーウィンストンの諸作を筆頭にギミック化を進めている
というあたりに集約されているような気がします。
これ以外にも色々特徴が挙げられると思いますが、これらに共通しているように思われるのが「機械式の延長線上にありながら、メンテフリー化をし、クォーツのように精度が高いことを条件にしながら、複雑な機能を実装する」という指向ですね。
私は以前、機械式の復活はテクノロジーの論理に身を置き続けたのではなく、宝飾業界に移ってモードの論理に移行したためだ、と論じ、モードとして行き詰っているというところに現在の機械式の限界と試行錯誤がある、と論じてきましたし、その中でCNC旋盤やCADといった現代の方法を使うのであれば、それに相応しい新たな輪列を纏うべき、というような趣旨のことも書きました。
それに対しここ1〜2年の時計業界のトレンドはさらに一歩も二歩も進んで輪列どころかマイクロマシニングも含めた生産過程まで切り込んで工作精度そのものにチャレンジしてきており、これはすなわち、モードの方向から反転して高度な次元の製造業に回帰するのか!という流れにすらなってきている、といえそうです。
とはいえ、生活に必要不可欠な技術、というわけでもないので、粗く言うと、高度なマシニングの上に成り立つ技術の塊を身に纏うという新たなモードの発生、ととらえることができるのではないか、とtentativeには結論できそうに思います。ややこしければややこしいほど、かつ、精度が高ければ高いほど、オサレである、というような。大量生産のための生産技術ではなく、精細さを誇るための生産技術、ともいえますか。
そうすると、その流れで出てきそうなものとして、極端かもしれませんが
■高精度な加工
バックラッシュのない歯車、なんて論理矛盾な気がしますが、少なくとも「分子レベルの磨き」とかいう某時計師の宣伝文句に相当するかそれ以上に微細なミクロンなりナノなりのオーダーの加工精度で大量生産できること、というのは、特に精度の面で差別化の重要なポイントになってきそうです。歯車切るのに半導体みたいにステッパとフォトレジスト使う、までいくかも。
■超長期のメンテナンスフリー化(歯車の素材、オイル、脱進機)
これは上記と関連しますがシリコン系の素材を筆頭に色々出てきてますね。ただまだどの部位にどの素材が相応しいかについては十分な研究が進んでいない、とも。金属素材と石化素材の取捨選択といえばレマニア5100なんてのも思い出しますが、今の技術ならびに無尽蔵の予算で最適化を行うと「目新しい」だけではない素材の選択が見られるかと。
■極めて高度に均質な部品群
んで、上記の生産の歩留まりを上げるために、そのバックグラウンドとしての現代的な生産プロセスと生産管理方法を導入する。半導体の工場のように。
# Patek Philippe runs SAPみたいなポスターが出てくるかも(笑
■その上で実現可能なギミックの実装
ガジェット感の強まりにも結びつくんですが、GPのジャックポットやリュージュのシンギングバードの先でもいいし、ハリーウィンストンのオーパスシリーズの先でもいいし、というところでしょうか。
# まさに小人さんが中で働いているようなのが出てきたりして(笑
だなんてこともありうるかもしれません。
こんなケースでは単に半導体関連メーカが出てきても商売上は意味がないので、やはり宝飾系とテクノロジ系の協業がある程度見られるのでしょうね。スウォッチグループがブレゲの新コンプリケーションモデルのためにニコンのステッパーを導入!みたいな悪夢のような話。
ここまでいかないにしても、もしこの方向感がいくばくでも当たっているならば日本のメーカーがその力を発揮する機会は出てくるはずです。
ただし、レベルソ好きさんが指摘するように単独で動けるだけのヴィジョンがないでしょうし、そういう高精度の汎用エボーシュを提供しつつ、モジュール開発に展開していくのも一興かと思われました。
# スプリングドライブや電子ペーパーもそうすりゃいいのに。
需要サイドはそこまで先鋭化するわけではないとは思いますので、メーカーサイドは需要に応じて、というかコンシューマーのセグメントに応じて
■高度なテクノロジを導入した新たなモードとなる機械式時計
■品質後回しでファッションアイテムにとどまる機械式時計
■先行するハイエンドメーカーを模倣し、追随するプレーヤー
という具合に大別されていき、さらに細分化されるという方向を歩むだろうと思います。
このセグメント化に対応するものとして需要サイドでは、それぞれ、現在のポジショニングとしては、innovator/early adoptor、early majority、late majority/laggard、に訴求すると見てよいかなとも思います。
前回、「腕時計という形をやめる」という謎なことを書きましたが、これは新しい産業構造が腕時計自体を古いものとして別なフォームを求めうること(懐中から腕へのシフトのように)と、それを実現する技術が伴うこと、ということを示唆したつもりでありました。今日のエントリで少しは明確にできたかなと思いますがいかがでしょうか。
■90年代中頃の機械式時計の復活の中で、特にデジタルやクォーツや当時の新素材との差別化から機械式の歴史、アナログさ、手作り感を打ち出すマーケティングが行われた
■実際には数を捌くためにかなりcomputerizeされた設計・生産プロセスに移行していた
■手作りであることの郷愁、という価値においてはAHCI(なかんずく、フィリップ・デュフォーなど)に明らかに劣後している
■コアなファン層が成熟してきて、上記のような状況を見抜きつつあった
■単に「機械式である」「複雑時計である」というだけでは差別化する価値を生み出さなくなりつつあった
というのがおそらく2001〜2002年くらいまでの状況だと考えています。これを受けて各社投資を始めて、その結果が2004〜2005年くらいから顕著に出てきていると思われますが、そこで特徴的なのが
■テクノロジーであることを謳いはじめているI(新素材)
■テクノロジーであることを謳いはじめているII(脱進機)
■テクノロジーであることを謳いはじめているIII(精度の高い加工)
■ハリーウィンストンの諸作を筆頭にギミック化を進めている
というあたりに集約されているような気がします。
これ以外にも色々特徴が挙げられると思いますが、これらに共通しているように思われるのが「機械式の延長線上にありながら、メンテフリー化をし、クォーツのように精度が高いことを条件にしながら、複雑な機能を実装する」という指向ですね。
私は以前、機械式の復活はテクノロジーの論理に身を置き続けたのではなく、宝飾業界に移ってモードの論理に移行したためだ、と論じ、モードとして行き詰っているというところに現在の機械式の限界と試行錯誤がある、と論じてきましたし、その中でCNC旋盤やCADといった現代の方法を使うのであれば、それに相応しい新たな輪列を纏うべき、というような趣旨のことも書きました。
それに対しここ1〜2年の時計業界のトレンドはさらに一歩も二歩も進んで輪列どころかマイクロマシニングも含めた生産過程まで切り込んで工作精度そのものにチャレンジしてきており、これはすなわち、モードの方向から反転して高度な次元の製造業に回帰するのか!という流れにすらなってきている、といえそうです。
とはいえ、生活に必要不可欠な技術、というわけでもないので、粗く言うと、高度なマシニングの上に成り立つ技術の塊を身に纏うという新たなモードの発生、ととらえることができるのではないか、とtentativeには結論できそうに思います。ややこしければややこしいほど、かつ、精度が高ければ高いほど、オサレである、というような。大量生産のための生産技術ではなく、精細さを誇るための生産技術、ともいえますか。
そうすると、その流れで出てきそうなものとして、極端かもしれませんが
■高精度な加工
バックラッシュのない歯車、なんて論理矛盾な気がしますが、少なくとも「分子レベルの磨き」とかいう某時計師の宣伝文句に相当するかそれ以上に微細なミクロンなりナノなりのオーダーの加工精度で大量生産できること、というのは、特に精度の面で差別化の重要なポイントになってきそうです。歯車切るのに半導体みたいにステッパとフォトレジスト使う、までいくかも。
■超長期のメンテナンスフリー化(歯車の素材、オイル、脱進機)
これは上記と関連しますがシリコン系の素材を筆頭に色々出てきてますね。ただまだどの部位にどの素材が相応しいかについては十分な研究が進んでいない、とも。金属素材と石化素材の取捨選択といえばレマニア5100なんてのも思い出しますが、今の技術ならびに無尽蔵の予算で最適化を行うと「目新しい」だけではない素材の選択が見られるかと。
■極めて高度に均質な部品群
んで、上記の生産の歩留まりを上げるために、そのバックグラウンドとしての現代的な生産プロセスと生産管理方法を導入する。半導体の工場のように。
# Patek Philippe runs SAPみたいなポスターが出てくるかも(笑
■その上で実現可能なギミックの実装
ガジェット感の強まりにも結びつくんですが、GPのジャックポットやリュージュのシンギングバードの先でもいいし、ハリーウィンストンのオーパスシリーズの先でもいいし、というところでしょうか。
# まさに小人さんが中で働いているようなのが出てきたりして(笑
だなんてこともありうるかもしれません。
こんなケースでは単に半導体関連メーカが出てきても商売上は意味がないので、やはり宝飾系とテクノロジ系の協業がある程度見られるのでしょうね。スウォッチグループがブレゲの新コンプリケーションモデルのためにニコンのステッパーを導入!みたいな悪夢のような話。
ここまでいかないにしても、もしこの方向感がいくばくでも当たっているならば日本のメーカーがその力を発揮する機会は出てくるはずです。
ただし、レベルソ好きさんが指摘するように単独で動けるだけのヴィジョンがないでしょうし、そういう高精度の汎用エボーシュを提供しつつ、モジュール開発に展開していくのも一興かと思われました。
# スプリングドライブや電子ペーパーもそうすりゃいいのに。
需要サイドはそこまで先鋭化するわけではないとは思いますので、メーカーサイドは需要に応じて、というかコンシューマーのセグメントに応じて
■高度なテクノロジを導入した新たなモードとなる機械式時計
■品質後回しでファッションアイテムにとどまる機械式時計
■先行するハイエンドメーカーを模倣し、追随するプレーヤー
という具合に大別されていき、さらに細分化されるという方向を歩むだろうと思います。
このセグメント化に対応するものとして需要サイドでは、それぞれ、現在のポジショニングとしては、innovator/early adoptor、early majority、late majority/laggard、に訴求すると見てよいかなとも思います。
前回、「腕時計という形をやめる」という謎なことを書きましたが、これは新しい産業構造が腕時計自体を古いものとして別なフォームを求めうること(懐中から腕へのシフトのように)と、それを実現する技術が伴うこと、ということを示唆したつもりでありました。今日のエントリで少しは明確にできたかなと思いますがいかがでしょうか。